真冬の湘南で、マジックのように波が上がる特殊なパターンを皆さんはご存知だろうか?
私は"ウェストスウェルトライアングル"と呼ばせてもらっているが、西高東低の気圧配置が決まって大陸からの季節風が日本海を吹きぬけ、湿潤な大気が日本海側の山々に大雪を降らせる時、ジェット気流の影響でその季節風の一部が関が原、三河湾を通り抜け太平洋に差し掛かって風向を北西から真西に向きを必ず変える。そんな時、アメダスデータで、御前崎・石廊崎、伊豆大島(トライアングルゾーン)の各風速(アメダスの風は10分間の平均風速)が10mを超えてくると、その2~3時間後にはまとまりはないものの、マジックのような胸肩サイズのウェストスウェルが葉山~茅ヶ崎方面にかけて到達してくる。ピーカンの真冬に低気圧が沖を抜けて"いない"のに、サイズアップしてきたら、きっとこのウェストスウェルのお陰だと思って良い。
さて、前置きが長くなったが、そんなマジックのようなウェストスウェルが到達し始めた冬の午後に、事件は起こった。
いつものように鎌倉七里ガ浜正面ポイントでロコ数人と波乗り楽しんでいたら、何やらレストラン珊瑚礁の前浜がオカシイ!一人のギャルが浜から叫んでいて、沖合いには顔だけ水面に出した男が泳いでいるようだ。
何だ何だ?真冬にオーシャンスイミング?水温15度の海では流石にトライアスリートでさえ泳げまい。男は服のまま浮いているものの溺れている風には見えないが、もし波乗り続けていて結果的に溺水死亡事故にでもなれば、自分が後で後悔するので、波は良かったのだが、まずは仕方なく私はパドルで様子を見に行くこととしたのだ。
パドルして間もなく、私には大方の事情の見当がついてしまった。
最悪~!!!男が女に振られて、失恋感情が思い余って入水自殺を、"演じて"いたのだ。七里ヶ浜は年間通じてドラマ撮影あり、演じるにはぴったしなのかもしれないが、我々にはまったくふざけた迷惑千万な野郎だ。
しかし、どうするかな?正攻法で注意しても、寒い冬の海に服のまま入っている気が狂った男には、何を言っても言うこと聞かないであろう。かといって、注意せぬまま帰るのも、後が心配だし...パドルしながら、名案?が浮かんだ。
本人を刺激しないように、偶然沖を通りがかったように見せかけておいて...
私『あれ、君何してんの?ここで泳ぐの危ないよ!ここはジョーズポイントと言って、よくサーファーがサメに襲われるんだよ。ついこの間もボディボーダーが左足食い千切られたんだよぉ~。』
...男無言。その上沖に向かって動き始める始末。この私にシカトするとは!(この後の私の行動を読める人いないだろうな?)
プッツ~ン!この時はライフセーバーとして、楽しい波乗りを中断してまで来てやったというのに、私は完全に切れたのだった。その瞬間怖~い鎌倉サーファーとも化していた。
『危ねぇと言ってんだろ。早く海から上がれよぉ~。』
無言続く...もう誰も私を止められない。止められない!このドラマ見過ぎのアホンダラを今すぐに海から上げて、正面ポイントに戻るには強硬手段しかないと頭で考える前に、もう自分の左手が男の頭にかかっていた。スブスブスブ!『死にたいんだろう。死にたいのなら、沈められても息を吸うなよ!吸うんじゃねぇ!』二度三度四度。ズブズブ、ジャブジャブ
ズブッ!正面ポイントのロコサーファー達からは、『やっちゃえ~。沈めちゃえ~。』の応援歌。沈められた男は目の焦点も合っていない。しかし、息をしたくて、もがいていることだけは確かなようだ。
私『おい、何があったか知らんが、この海でアホなことはやめろよ!俺たちローカルはこの海を大切に守っているんだからよぉ。死ぬつもりだったら他へ行けえぇぇぇ!!』阿修羅の如く、切れに切れた鎌倉サーファーに恐れ慄いたのか、ついに男は納得して海から上がるべく、岸に向かって泳ぎ始めたのであった。
もし、皆さんが同じような状況に遭遇したら、ライフセーバーとして、どう対処しますか?
私はそんな時の殺し文句は、とてもシンプルだと思います。それは、如何にそのポイントに精通しているか、愛しているかと言うことを相手に分からせる事だと思うのです。海を守る、浜を守る!言うは易し、行うは難し、です。
ウェットスーツの普及により、真冬でもライフセーバーの波乗り姿、トレーニング姿を、昨今は見受けられるようになりました。少しづつですが、ローカルサーファーに挨拶を掛けられる仲間も増えてきたように思います。水浴場条例という錦の御旗がなくても、オフシーズンでも一目置かれるライフセーバーとは...
それは、いかに海を大切に愛して、ロコにリスペクトされる存在になることではないでしょうか。
Real Waterman!君達も是非目指してほしい。
なお、先ほどの七里での事件は、全くのフィクションです。くれぐれも皆さんは真似しなようお願いします。それでは、怖~い鎌倉の海でお逢いしましょう、ネ。




















