競技会で思うこと
今年で第30回を迎えた先の全日本ライフセービング選手権大会は、北海道から沖縄まで日本全国から1000名ものライフセービングスピリッツが欠落していた選手が見受けられた。
先の学生選手権の時に、敢えて小峯JLA理事長が開会式の挨拶の中でその点に触れたが、30年以上の歴史を経て、注目されている今だからこそ、ライフセービング(人命救助活動)とは何かを日本のライフセービング関係者はもう一度考え直すべきである。
先のイタリア世界選手権大会で、日本がオーシャン競技で過去最高の8位となった。またビーチフラッグスで2位、ビーチリレーでは3位入賞もしている。
とても喜ばしいことと考えたいが、競技が注目を浴び過ぎて、本来のライフセービング(人命救助活動)が軽んじられてはいないだろうか?
自分は、つい最近まで日本代表選手をもっともっとサポートしたいと考えてきた。今やJLAは、日本財団、三共製薬、DHL、森永製菓など日本で著名な団体や大企業がサポートして下さっている。この度の世界選手権は、選手からの一部負担を求めず、総渡航費用をDHL様にお願いしてサポートして頂いた。
出発前に器材の運搬に数百万円かかる事が分かり、大慌てをしたが、結局は選手に負担をさせることなくDHL様の特段のご理解により対応も出来た。従来は選手に負担を強いていたので、自分としては精一杯の事をしてあげられたと思ったが、いま本当にそれで良かったのかと自問自答している。
今回のイタリア大会関係の費用は、事前の合宿費用などを含むと1000万円を超える。JLAの一般会費としたらなんと1000人分である(関係者は勘違いしないで頂きたい。私はイタリア世界選手権での日本チームは、過去最高のチームワークで高い実績を上げてきたと高く評価しています。問題は今後のJLAの指針と予算配分です。)
ライフセーバーが著しく増えた分、我々JLA関係者は、真のライフセービングスピリッツを教えることが疎かになっていなかったであろうか。一生涯心に刻めるような、心に染み込む感動の講習会や指導ができていたであろうか?
ライフセービングスピリッツについて
昨今のライフセービングスピリッツの低下は、それをラフセーバーに向けるベクトルではなく、理事長を始めJLA関係者全員が自分に対してベクトルを向けるべきと思う。
今後に求められるのは、競技会運営費よりもラフセービングスピリッツの徹底(礼節の教え)、ジュニアライフセービングの普及、国民を対象にしたCPR講習会プロジェクトの推進、そして地方のライフセービング活動への戦略的なサポート等ではないかと、今は思っている。
今年、福井大学に日本財団様の協賛により1本のレスキューボードを提供した。6月の種目別選手権大会の時に彼等に出逢って、一本もボードがないので練習が出来ないと言われた。今年の協賛事業で検討をすることを話して、その約束を果たしたのだった。先の全日本で再会した時に、彼等から心に染みるお礼の言葉お受けた。本来ならば我々からもっともっと早く提供するべきであったはずだ。
今後もし1000万円の予算があれば、日本全国で生まれたばかりの、資材がほとんどないけれど志が高い各ライフセービングに、相当数のレスキューボードや救助資材を送れるはずだ。
3万人の自殺者
今年4月から、助教授に就任して従来以上に多忙となった小峯理事長をサポートすべく、JLAの専務理事となり、毎週金曜日の午後を自分に課せられたマイト(無報酬の海浜警備活動)と考えて、交通費も辞して無報酬でJLA事務局に従事してきた。
JLAは優秀な事務局員はいるのだが、方針決定がリアルタイムにできない。以前からの問題点を把握していたので、ゆえに専務理事となって、自分が認められた範囲の専決事項を即断即決していた。
それもこれも日本のライフセービングをもっともっと広めて、海の悲惨な事故を少しでも減らしたい。また人命を救うという崇高な活動が、年間3万人以上の自殺者や悲惨な事件を生み出す青少年による事件など、重症の心の病を抱える国民に、きっと明るい光を届けてくれると確信している。
礼節とは
小峯理事長のみならず、自分も、ライフセービング競技をいくら強化しても、『ライフセービングを育む心=スピリッツを鍛えなければ何ら結果を表さない』と痛感させられる悲しい経験を最近何度も経験している。
日本人の美徳の一つである『礼節』。ライフセービングにとっても無くてはならない!また競技中、競技後にあたっても然である。
それは選手のみならず、オフィシャルも同様であり、各委員会委員、事務局員、そして我々理事こそが選手の模範となるべき存在でなければならない。
42歳の5年前から極真空手を続けている。武道を稽古するのは高校一年生の柔道依頼であった。礼に始まり、礼に終る武道。
すべてにおいて礼節が求められる。私の師範が、初めて全日本空手選手権大会で優勝した時に思わずガッツポーズをしてしまい、故大山倍達総裁に『見苦しい!』と一喝されて試合後に祝福の握手をして頂けなっかたと言う。
JLAウェブで紹介した月刊誌『剣道時代』で、小峯理事長が対談した小林英雄神奈川県剣道連盟理事長のお話の中でも、"敗者へのいたわり"ができぬ剣道選手に対しては、有効打突を取り消すことができるとあった。
我々ライフセーバーは、『生命を救うスポーツ』に携わる前に、まずは監視台の周囲の海水浴客、海の家業者、漁師、サーファー、地元住民などから尊敬される人物でならねばならない。何故我々ライフセービングはタバコを吸わないのか?身体に悪い?息が上がって救助に支障をきたす?それも確かに一理ある。しかし最大の理由は、副流煙(タバコの先から立ち上る煙。紫煙。)で周囲の人に危害を与えるからである。
自分の亡き父親は警察官であったが、いつも口癖のように『常日頃から住民を大切にしなくてはならない。何故ならば、検挙につながる情報のほとんどは住民からの通報であるから』と言っていたのを思い出す。
万一事故が発生した時に、最初の溺水者の発見・通報は、ライフセーバー以外のケースが大半であろう。また、酒を飲んだ危険な人物をマークするように教えてくれるも、ライフセービングをサポートしてくださる関係者であることが多い。であるならば、百害あって一利なしのタバコは絶対に吸ってはならないのである。
我々ライフセイバーは尊敬される存在でなければ、誰が手助けしよう。誰がホイッスルに従おう。誰が遊泳禁止の指示に従うか・・・。
ならぬ事はならぬもの
会津藩の教えに『ならぬ事はならぬものです』とある。以前、仲の良い高校生を引率?して福島の海にサーフトリップキャンプに出掛けて、あまりにも数日間良い波に恵まれたので、私の提案でサーフポイントへの感謝の気持ちとしてビーチクリーンをした事があった。
小1時間掃除して帰ろうとしたら、がっしりとした恐ろしそうなレジェンドサーファーが近づいてきた。何か文句を言われるのかと思ったら、『感動した!』と言って名刺とステッカーを差し出されて、『私はこの辺りを仕切っている者なので、もし何かあったら連絡下さい』と言われた。その時にもらったステッカーこそ、会津藩の教育方針『ならぬ事はならぬもの』であった。
いつの世も、やってはいけない事は、やってはいけないのである。
最後に
かなり脱線してしまったが、私は日本ライフセービング協会の理事、神奈川県ライフセービング連盟(神奈川県支部)の理事長として、今月から数年をかけて、いや一生涯をかけて、ライフセービングにおける『礼節』の欠如を厳しくしかりつける頑固じじいを引き受けたいと思う。
何故ならば『礼節』こそ、ライフセービングスピリッツの第一章であるからだ。
ライフセービングはきっと日本を救う。何故ならば小学校時代、学生で間違いなく一番ワルであった自分を更正させた?のが、スポーツであり、ライフセービングであるからだ。
きっと天国の父や、担任の先生が微笑んでいることであろう。




















