潮の香り01

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ノーベル科学賞受賞者田中耕一氏はライフセーバー?

ノーベル科学賞受賞者の田中耕一さんは"ライフセーバー"である。
あの『恵比寿様(えびすさま)』のような顔でいながらとてもシャイで、作業服が好きで、背広は受賞前一着しか持っていなかった庶民の仲間だからヨイショするのではない。彼はライフセービングのベーシックの講習も、救急法の講習も、もちろん夏のライフガード活動なども一切されたこともないであろう。

しかし、彼が発明した『たんぱく質分析装置』は、今後数多くの難病を治療する特効薬の開発に多大な貢献をすると言われている。ノーベル賞受賞は当然のようだ。

もっとも多くの人命を救った日本人。

去年私はマラリア蚊に刺される可能性を危惧しながらも、夢の波に魅せられるあまり、インドネシアの北スマトラの数々の無人島(インド洋)を、7月と10月二度にわたって波乗りするためにボートトリップした(私は波伝説のレポートを書く為の仕事と主張したが、周囲は素直に賛成してくれなかったみたい???)。

毎日仕事として?誰もいない素晴らしい波の数々を仲間だけで堪能しながらも、毎夜宿泊している大型ボートの光に近づく数多くの"Mosquitoes"にマラリアにかかる心配をしていた。現地の住民の多くもマラリアに悩まされていて、その治療に日本人の田中さんの発明が大きく貢献しているのは、嬉しいというよりも、日本人として、サーファーとして、ライフセーバーとして、とても誇りに感じた。
『いままでに日本中の全ライフセーバーがレスキューした人の数よりも、世界のより多くの人の命を田中さんは救った』と、最大の賛辞を彼に送りたい。

多くの人に希望と勇気そして感動を与えた。

今年初めにNHK『人間ドキュメント』シリーズで、その田中さんが特集されていた。田中さんが生まれた時、母は産後の肥立ち(ひだち)が悪くて産まれてまもなく亡くなったと言う。その後、赤ん坊の田中さんは父親だけでは育てられない致し方ない事情により、親戚に預けられることとなった。
新しく両親となった親戚は、実の4人の子供達に対して、田中さんを実の兄弟として受け入れるよう厳しく申し渡したという。結局田中さんが18歳になって大学受験のために取り寄せた戸籍謄本を見て偶然知ることとなるまで、その事実は一切本人に知らされず、真の息子・兄弟として大切に育てられたと言う。

養父は、のこぎりの目方(めかた)職人。切れが悪くなった、のこぎりの刃を一本一本直していくのが日々の仕事。目方職人の技術で、新しい息吹が吹き込まれて、新しく生まれ変わるのこぎり道具。実に地味な根気のいる、しかし大工さんらには無くてはならない大切な職人さんである。

田中さんが苦労の末に発見された『たんぱく質分析装置』は、実にそれらの生い立ちが深く関与している。

実母の死から、この世に病気による苦しみや悲しみが無くなれば...と病気の原因を追求するためのたんぱく質分析装置の開発に、ビジネスの域を越えて深く携わることとなる。

少年時代、養父の普段のひたむきな日々の仕事への真摯な背中を見て育ったが故に、同僚がサジを投げだすような地道な研究でも、コツコツとコツコツと日々ひたすら地道に打ち込んで成し得た偉業でもあったと確信する。

エンジニアの仕事は、とかく地味で結果がすぐに表れない忍耐力のいる仕事だが、田中さんの受賞で世界中のエンジニアが自分の仕事に熱意を感じたとともに、再び誇りを抱いたと思う。暗いニュースが続く日本において、多くの国民に日本人の誇りと感動・勇気を与えたに違いない。
きっと島津製作所の社員、地域住民、出身地、出身校など、あらゆる関係先にも同様の感動を与えたに違いない。

僕たちは常にライフセーバーなんだ。

この春、大学を卒業されるライフセーバーの皆さんへお伝えしたい。大学4年間ライフセービングを学び、四度の夏をライフガードに情熱を燃やして、4月からはその体験を生かす仕事に就かれる"幸せ者"もいらっしゃることであろう。また、思いとは違って傷心して全く関係の無い仕事に就くと思っている方もいらっしゃるであろう。

そこで、是非考えて頂きたいと思う。

ライフセービングが関係ない仕事などこの世にあるであろうか?人間が生活する限り、また人間が従事する社会活動の全てにおいて、事故防止も含めてライフセービングは大なり小なり必ず関係しているはずだ。

時に、日々仕事に追われる繁忙生活にゆとりを無くして、また利益を追求する上からの圧力に社会へ貢献することを忘れかけている会社人間に対して、新社会人は、ピュアな姿勢から会社人間が気づかない、忘れかけていた観点からの画期的な提案をすることが度々ある。我々ライフセーバーは現役、OB、新社会人のみならず、常にライフセービングについて考えることが、今この殺伐とした世の中には特に求められていると思う。

困難を克服してこそ得られる価値がある。

私が横浜市役所に勤務していた時、横浜海の公園の監視活動を始め、次の勤務地の大さん橋ふ頭の安全対策(岸壁から転落時の救助ボート、縄梯子、救命浮環の配備等)を実施した。それまで実績の無い事業を敢えて仕事を増やす為に周囲に協力してもらうこと。

また財政当局に新規の予算要求をするためは、大変な労力と熱意を費やすことが求められた。

しかし、事故はいつ起きるか分からない。予期出来ぬから事故が起こるとも言える。事故防止に対する普段の継続した努力が事故を防ぐ。事故は肉体的な弱者である子供、女性、お年寄り、身障者らが犠牲になりやすい。

我々は貴重な青春時代をライフセービングに捧げて、人間としてひとまわり成長させてもらった。
この恩は一生を通しても少しずつ返す価値ある普遍のものである。

対立の多い世の中のライフセービング。

民族対立、宗教対立、9.11同時テロ、イラク攻撃、拉致...世界に渦巻く争いによる被害者(飢餓難民、戦争による死傷者)はいつも弱者である市民だ。

もし世界中の市民や社会人が真っ先にライフセービングを学べば、多くの無用な争いは無くなる筈だ。言葉で表せば簡潔だが、ライフセービングとは、本来人類が生き抜いていく上で必ず身に備えてきた大事な技術や知識である。

スローライフやスローフードが静かなブームなのも、デジタルに対するアナログ、便利に対する不便、お金に対するお金で買えない価値観、速さに対して手間暇をかける楽しさなどなど、人類は有史以来のヨリモドシのごとき転換点を迎えている。争いに対するライフセービングとも言えまいか?

田中耕一さんから世界平和へ、話はかなり飛躍してしまったが、新社会人のみならず一人一人のライフセーバーは生涯現役時代の熱きハートを抱き続けて、何よりコツコツと地道な活動を続けて、微力ながらも世界平和に貢献されるべきである。
21世紀初頭にあたって硬い話となってしまったが、次のメッセージを締めくくりの言葉としたい。

8月31日午後5時00分の感動をいつまでも。

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